脂肪酸組成とは???
これまで油の主成分はトリアシルグリセロールで、トリアシルグリセロールには様々な脂肪酸が結合しているというお話をしました。
ここで重要になってくるのは「脂肪酸組成」という考え方です。
―――目次―――
脂肪酸組成とは
油の種類によって、結合している脂肪酸の種類や組成が異なります。
結合(含んでいる)脂肪酸の種類を比率で示したものが脂肪酸組成です。
文字だけでの説明だと頭に入りにくいので、下の表を見てみましょう。
名称(略称表示) | 菜種油 | 大豆油 | あまに油 | いわし油 |
---|---|---|---|---|
ステアリン酸(16:0) | 4% | 11% | 5% | 25% |
パルミチン酸(18:0) | 2% | 4% | 3% | 6% |
オレイン酸(18:1n-9) | 63% | 24% | 15% | 14% |
リノール酸(18:2n-6) | 20% | 54% | 17% | 1% |
γ-リノレン酸(18:3n-6) | 8% | - | - | - |
アラキドン酸(20:4n-6) | - | - | - | 2% |
α-リノレン酸(18:3n-3) | - | 7% | 60% | - |
EPA(20:5n-3) | - | - | - | 8% |
DHA(22:6n-3) | - | - | - | 19% |
参考に菜種油、大豆油、あまに油、いわし油を例として挙げてみました。
各油が含んでいる脂肪酸のうち、どの脂肪酸がどれだけの比率で含まれているかが示されています(=脂肪酸組成)
家庭でも使われることの多い菜種油ではオレイン酸が63%と非常に多く含まれています。一方、いわし油ではオレイン酸は14%程度しかなく、菜種油には含まれていないEPAとDHAが27%含まれています。
脂肪酸組成=油の特徴
脂肪酸は種類によって栄養機能が異なります。
例えばステアリン酸のようにエネルギーになりやすい脂肪酸、DHAのように脳機能に寄与する脂肪酸といった様に脂肪酸によって働きは様々です。
だからこそ、脂肪酸組成は油の種類よってどのような特徴があるかを知るために非常に重要になるのです。
脂肪酸組成=油の特徴!!!です。
ちなみに私の1番好きな油は菜種油です。
菜の花、見てるだけでもきれいで癒されますよね~
脂肪酸の分類
前回は脂肪酸とは?という解説をしました。
oil-information.hatenablog.com
この脂肪酸ですが、化学的に分類することができます。
今回はまじめに分類の話をしてみます。
脂肪酸の分類
脂肪酸は右側COOHの構造を持ち、左側にたくさんの炭素原子Cと水素原子Hがくっついています。左側部分については、たくさんの構造があるのでR-と表すことが多く、一般的に脂肪酸はR-COOHと化学的に表現します。
脂肪酸は炭素の数、二重結合の数、二重結合の位置によって色々な種類に分かれます。表を見てみましょう。
一例ですが、↑↑↑こんな感じで 、炭素の数、二重結合の数、二重結合の位置によって、それぞれ異なる脂肪酸になります。
二重結合・・・?!(読み飛ばし可)
ここで二重結合の説明です。
炭素原子は基本的に4本の手をもっているため、他の4つの原子と手をつなぐことができます(ステアリン酸の図を見てみると、どの炭素も4本の手を持っているかと思います)。
本来ならば他の原子と1本の手で手をつなぐところ、2本の手を使い強力に手をつなぐ結合様式(=これが二重結合です)
ちなみに二重結合があると、炭素は2本の手で炭素と手をつなぐため、その分水素と手を繋げなくなります。
二重結合(=)の位置ですが、COOHと反対側のCH3(左側)から何個目に最初の二重結合があるかが表で示されています。
この二重結合ですが、2個以上ある場合、最初の二重結合から炭素原子1個飛ばしで規則的にできる性質があります。
(=C-C-C=)←こんな感じの規則性で二重結合はできあがります。
脂肪酸を二重結合の観点から分類してみる
脂肪酸は大きく二重結合の有無で下記2種類に分けることができます。
二重結合なし(例、パルミチン酸)→飽和脂肪酸
(不飽和脂肪酸は二重結合の数に応じて、1価不飽和脂肪酸、2価不飽和脂肪酸、3価不飽和脂肪酸・・・と呼ばれることもあります)
二重結合の有無で、脂肪酸の栄養学的価値が異なることから、飽和・不飽和脂肪酸に分けられています。
また、二重結合を有する不飽和脂肪酸は、二重結合の位置によってn-3、n-6、n-9系不飽和脂肪酸と呼ばれます。
上の表に二重結合の位置という項がありますが、左(CH3側)から何番目の炭素に最初の二重結合があるかで分類されます。
・オレイン酸(n-9)
・α-リノレン酸(n-3)
※n-はω-と表記されることもあります。意味は同じです
脂肪酸の略称表示
繰り返しになりますが、脂肪酸は炭素数、二重結合の数と位置で様々な種類に分かれます。そのため、炭素数と二重結合の数、位置を用いて略称表記することができます。
例えば炭素数18、二重結合数2、二重結合の位置が左から6個目のリノール酸の場合、
18:2(n-6)
主要な脂肪酸一覧
日常的に摂取することの多い脂肪酸がどんなものなのかを下の表で見てみましょう。
炭素数、二重結合数とその位置が、略称表示に対応していることがわかるかと思います。
次回のお話になりますが、脂肪酸の種類により有する栄養機能が変わってきます。
まとめ
脂肪酸とはR-COOHで表される物質の総称
脂肪酸ってなんだ?
こんにちは、油のプリンスです。
前回は油の正体トリアシルグリセロールとは?というところから、トリアシルグリセロールには様々な脂肪酸がくっついてるという話をしました。
じゃあ脂肪酸って何???
wikiにはこう書いてありました・・・・
長鎖炭化水素??カルボン酸??て方も多いかと思うので軽くご紹介。
カルボン酸とは-COOHという化学構造を指します。お酢の主要成分である酢酸もこの形を持っています。
長鎖炭化水素は、炭素原子と水素原子のつくる鎖状構造と思ってください。
炭素の数が多いものあれば、少ないものもあり・・・
良くわからんので図で見てみましょう!!!
図で見る脂肪酸
図を見てみてください。
みんな右側にCOOHという構造がありますね(この構造をもってる物質をカルボン酸と呼びます)。
左側にはたくさんのCとH(炭素原子と水素原子)がありますね。
右側にCOOHがあって、左側にたくさんの炭素と水素→これが脂肪酸です!!
また、下の3つの脂肪酸には=で示された2重結合という部位があります。
良く見てみると、炭素・水素・2重結合の数や2重結合の場所が違います。
つまり左側の構造がみんな違うのです!!!
図の例ですが、
炭素数 16→パルミチン酸
炭素数18 二重結合数3 →γ-リノレン酸 or α-リノレン酸
脂肪酸の詳しい分類は次回のお話にしましょう!
まとめ
脂肪酸とは、右側にCOOH、左側にたくさんの炭素と水素をもった物質の総称。
左側の炭素や水素の数、2重結合の数や位置の違いが脂肪酸の種類の違いに。
油の主成分「トリアシルグリセロール」とは
こんちくは、油王子でごわす。
前回の記事では、食用油=トリアシルグリセロール というお話をしましたが、じゃあトリアシルグリセロールってなに???
ということで早速解説に参りましょう~!!!
トリアシルグリセロールをご紹介
トリアシルグリセロールは、一つのグリセリンに3つの脂肪酸が結合した形をとっています。
化学的な図で見ると↓↓↓の通り!!!
グリセリンは化粧水など良く入っている保湿成分ですね。
脂肪酸についても、石鹸(脂肪酸ナトリウム)の構成成分となっています。
図で見てみると、グリセリンは右側に3つの手(-OH)を持っています。
この3つの手で3つの脂肪酸と手をつなぎます。
この3つの手で手をつないでいる状態こそ「トリアシルグリセロール」です!!!
なお、化学的な説明では上図はグリセリンと脂肪酸がエステル結合し、トリアシルグリセロールになると表現されます(参考)
ちなみに脂肪酸にはたくさんの種類があります。
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、DHAなど耳にしたことがありませんか?
これらはすべて脂肪酸です!
様々な脂肪酸→様々なトリアシルグリセロール
つまり、グリセリンはいろんな種類の脂肪酸とくっつくことにより、これまたいろんな種類のトリアシルグリセロールが出来上がります。
例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸で構成されたトリアシルグリセロール。
一方、シンプルに3つのオレイン酸だけで構成されたトリアシルグリセロール。などなど。
つまり油の主成分「トリアシルグリセロール」はあくまでも物質の総称であり、くっついている脂肪酸の種類により、色々な種類のトリアシルグリセロールがあるのです。
参考にトリアシルグリセロールの簡略図を載せてあります。
トリアシルグリセロールの種類は何種類あるでしょう???
・・・・脂肪酸のくっつき方で無限のバリエーションがあります!
どのような脂肪酸がくっついているか→油の個性になる
菜種油、大豆油、イワシ油など色々な種類の油がありますが、それぞれ何が違うのでしょうか?(どれも主成分はトリアシルグリセロールです)
ズバリ、くっついている脂肪酸が違うのです!!
(=色々な種類のトリアシルグリセロールでできている)
このくっついている脂肪酸の違いが、各油種の違い、つまり油の個性になるのです。
例えば、菜種油はオレイン酸を多く含み(50%以上)、その他、リノレン酸やリノール酸を含みます。
イワシ油はオレイン酸は少ないのですが、DHAを多く含みます。
こんな感じで、どんな脂肪酸をどれだけもっているかが油の個性につながります。
まとめ
トリアシルグリセロール=グリセリンと脂肪酸がくっついた物質の総称
脂肪酸にはたくさんの種類がある
脂肪酸のくっつきかたの違い→油の個性に!
そもそも油ってなに??
はじめましてこんにちは、油王子です。
そもそもなのですが、「油」とはなんでしょうか?
調理に使うオイルも「油」と呼ばれますが、
ガソリンなども「油」と呼ばれますよね??
「油」とは?
「油」とは、ずばり
水に混ざらない物質(液体)の総称です。
一例ですが、ドレッシングは水部分と油部分が分離していますよね。
その、水に混じらない液体部分が「油」です!!
まさに、お互いに混じり合わない水と油の仲だったのです!!
そのため工業用の潤滑油やガソリンも「油」と呼ばれる一方、我々が口にする植物油も「油」と呼ばれるのです。
ちなみにベンゼン、クロロホルム、メタノールといった危険そうな薬品たちも「油」の定義に該当します。
我々が口に入れる油も「油」で通じることは多いですが、工業用や化粧品用の油と意味を使い分ける上でも「食用油」「植物油」「サラダ油」などと呼ばれることがあります。
食用油とは?
このブログでは、口にすることができる油、「食用油」について書いていきたいと思います。
ここで再び定義的な話になりますが、食用油ってなに????
我々が口にする食用油ですが、動植物を由来とした食用油というのが一般的な定義です。
食用油の成分ですが、化学的に分類すると多くの成分が含まれています。
・トリアシルグリセロール
・ワックス
・リン脂質
・スフィンゴ脂質
・脂溶性ビタミン(トコフェロール、ビタミンA)
上記の通り、動植物油には多くの成分が含まれておりますが、
中心となる成分はトリアシルグリセロールとなっています。
スーパーで買う食用油の成分の99.9%はトリアシルグリセロールとなっています。
食用油の成分=トリアシルグリセロール と覚えてください
(「ここテスト出ますよ!!!!」
まとめ
油とは水に溶けない液体物質の総称!工業油、食用油がある。
食用油は動植物を原料とした飲食可能な油。
食用油の成分―99.9%トリアシルグリセロール。
実は、トリアシルグリセロールも物質の総称です。
つづきはまたこんど~!!